労働基準法物語 > 第107条〜第109条
労働基準法物語は、具体的な労働トラブルを労働基準法の条文ごとにご紹介した物語です。
労働トラブルが発生すると、どこからともなく現れる『おせっかい親父』。
そんな『おせっかい親父』が、労働トラブルを解決していきます。
こうした場面に直面したときの『あるべき対応』と『今後の対策』もあわせて紹介しています。
就業規則作成・見直し・運用のためにも、参考になります。
労働基準監督署による是正勧告・指導票にも対応いたします。
逐次追加していきますので、ブログのようにお読みになっていただければ幸いです。
(労働基準法物語は、以前ブログにて展開していたものに、加筆・訂正したものです。)
無断転載・転用を禁止します。
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労働基準法第107条〜第109条 (平成23年12月16日登録)
(労働者名簿)
第百七条 使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。
(2) 前項の規定により記入すべき事項に変更があつた場合においては、遅滞なく訂正しなければならない。
(賃金台帳)
第百八条 使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。
(記録の保存)
第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を三年間保存しなければならない。
物語
(労働三帳簿・記録の保存)
…… 副題 : 大切な労働記録の喪失に備えるために ……
第82話
パートの幸子さん : 会社を辞めたんですが、最後のお給料が少ないんです。 毎日、自分で手帳に時間を記録していたんですが、これと全然あってません。 なんでも、退職したので、タイムカードを捨ててしまった、って言うんです。 上司が、労働時間をつけていたので、これによって、計算して出した、って言うんです。 でも、私、上司が帰ってからも、仕事をすることもあったんですよ。 この場合は、上司が帰った時間に、私も帰ったことになる、とか言って…
おせっかい親父 : 先月まではどうじゃった?
パートの幸子さん : 私が手帳に書いておいた時間どおりでした。
おせっかい親父 : 困りましたな…
パートの幸子さん : 私の手帳どおり、払ってもらえないんですか?
おせっかい親父 : 仮に、監督署に申告したとしても、タイムカードがないとなると… 監督署の場合、客観的な証拠がないと、難しいですな… 会社が、任意に認めてくれれば、別じゃが…
パートの幸子さん : 会社に、指導ができないってことですか?
おせっかい親父 : いや。 労働者名簿・賃金台帳・出勤簿(タイムカード)は、いわゆる労働三帳簿といって、労働基準法109条によって、3年間の保存義務があるので、この点は指導できる。 でも、だからといって、『タイムカードを捨ててしまったのだから、労働者・退職者の言うとおり、払いなさい。』とは言えんのじゃよ。
パートの幸子さん : 監督署とか、労働基準法って、労働者の為にあるんじゃないんですか?
おせっかい親父 : 基本的には、そうも言えるんじゃが…
パートの幸子さん : じゃあ、泣き寝入り、ってことですか? 今まで、こんなことって、初めてです。 ひどいですよね。
おせっかい親父 : そうですね。 ひどい会社ですね。 (実は、結構、こうした事例は多いです。 もっとも、親父の顧問先には、こうした事例はありません。 当然ですが。) とりあえず、監督署に、3年間の保存義務がある、ってことは、指導してもらいますか。 場合によっては、会社も、非を認めて、幸子さんの手帳どおり、支払ってくれるかも知れん。 でなければ、あっせんや訴訟等を利用することになるのぉ〜。 民事訴訟の場合は、必ずしもガチガチの証拠主義とは言えず、裁判官の自由心証が認められるので、勝てる可能性は、ないとは言えないのぉ。
ってなわけで、監督署に申告することに。
結果としては、3年間の保存義務の点は、会社への指導ができましたが、幸子さんが主張する労働時間による支払は、実りませんでした。
でも、すぐ、次の仕事が見つかりましたので、諦めることにしました。
おせっかい親父、これって、確信犯ですよ!!
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あるべき対応
…… 副題 : 大切な労働記録の喪失に備えるために ……
労働基準監督官は、司法警察職員ですので、刑事機能を基礎に行動します。 刑事法の基本は、「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。 ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」(刑法38条1項)として、過失犯(過失を成立要件とする犯罪)の処罰は法律に規定があるときにのみ例外的に行うとされています。 労働基準法は、すべて故意犯のみが対象となっており、過失犯を問う規定はありません。 ですので、上記の例で、わざと捨てた、となると故意犯成立の余地がありますが、間違って捨ててしまった等となると犯罪は問えないことになります。
本事案の場合は、『退職したので、タイムカードを捨ててしまった』ということですので、過失とは評価されません。 それでは故意といえるか。 法律を知らずに捨ててしまった、と解されます。 これを法律の錯誤、といいます。 このような法定犯の場合は、責任故意ないし責任を阻却とする(したがって不可罰)学説もあります(よく、違法性の意識がない、という表現をします)が、裁判実務ではそうした扱いはされません。 もしこれを許したら、世の中ぐちゃぐちゃになってしまうでしょう。
しかしながら、労働基準監督署にも限界があります。 仮に違法だとしても、客観的な記録がない以上、何時間働いたからいくら払え、とは言えないのです。
べき論的には、本事案のような場合は、なんらかの補償をすべきでしょう。
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今後の対策
…… 副題 : 大切な労働記録の喪失に備えるために ……
なくさない方法、万が一なくしても復元できる体制の構築が必要です。
デジタルデータを用いている場合は、バックアップを取ることは必須です。 タイムカードを用いている場合は、こまめにコピーを取っておくことをご推奨します。
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