就業規則の疑問 


就業規則Q&A

 就業規則の作成にあたって、基本中の基本をご紹介します。 
 貴社にとって、はじめての就業規則ですので、否、はじめての就業規則だからこそ、留意すべき点等もご紹介しております。
 

1.就業規則とはなにか?

 簡単に言えば、従業員の労働条件と服務規律について定めるものです。

 常時10名以上の事業所は、必ず就業規則を作成しなければなりません。


2.10名未満の事業所は、就業規則を作る必要はないか?(就業規則のメリット・デメリット)

 労働基準法的には、不要です。  労働基準法は、刑法の特別法であり、『違法とはならない。』とはいえます。

 しかし、トラブルの未然防止のためには、10名未満の事業所であっても、就業規則は大きな武器となります。(メリット)

 反面、事業所も就業規則に従わなければなりませんので(いわばデメリット)、作成には慎重な検討が必要となります。


3.就業規則を作れば、絶対トラブルとならないか?

 もちろん、残念ながら、決して、そうとは限りません。 刑法があっても、犯罪はなくなりません。 ただし、不正行為の抑制機能は働きます。 それと同じです。 また、トラブルの解決・拡大抑制にも有効です。
 


4.モデル就業規則は有効か?(無料で便利だが、落とし穴はないか?)

 厚生労働省・労働局のホームページ等から、容易にダウンロードできる『モデル就業規則』。

 少しアレンジするだけで、合法的な就業規則を作れてしまいます。 そうすると、とても便利だと思えてしまいます。

 しかしながら、実は大きな落とし穴が待ち構えています。 労務管理上、あった方がいい規定がなかったり、会社規模や業態から見て、なくてもいい規定が定められていたりします。

 また、仮に一度作ってしまうと、変更は容易ではありません。 労働条件の変更のためには、原則として、従業員ひとりひとりの合意が必要となります。 例外的に、就業規則の変更によって、個別の合意に代えることは出来ますが、実はそれほど容易ではありません。

 たとえば、退職金を廃止し、または減額する場合を考えて見ましょう。

 長年勤めてきた従業員にとって、特に定年退職後、年金生活に入ろうという従業員にとって、退職金の廃止・減額は死活問題ともなります。 なので、法的にも従業員の既得権が保護され、ただ単に就業規則の変更によっては、退職金の廃止・減額を行うことはできません。
 労働条件の変更となるわけですが、法的な有効要件としては、
   ・個別の同意を得るか(労働契約法第8条)
   ・合理的な就業規則の変更(労働契約法第9条・第10条)
が必要とされます。
 個別合意があれば問題解決となりますが、多くは困難となり、合理的な就業規則の変更が必要となってきます。 合理的な就業規則の変更、といえるためには、使用者側から見れば高度の必要性、あわせて労働者側から見れば許容性が必要です。
 許容性の観点からは、代替措置・経過措置等の配慮が必要とされます。
 退職金の例でいえば、既得部分の清算・将来部分の賃金増額等が求められます。

《参考》 労働契約法
(労働契約の内容の変更)
第八条
労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
(就業規則による労働契約の内容の変更)
第九条
使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
第十条
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程 度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものである ときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則 の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

 ですので、モデル就業規則を直ちに用いることは、とても危険です。

 監督官としては、違法でなければOKですが、民事的には不当と評価される恐れがあるのです。

 このように、一度就業規則を作成すると、変更は容易ではありません。 ですので、モデル就業規則・ひな形の利用はとても危険、ということがご理解いただけたかと存じます。

 身の丈にあった就業規則が必要、ということになります。

 弊事務所オリジナル就業規則は、必要最小限+貴社に有利な内容となっています。


5.自力で就業規則は作れるか?(専門家への依頼と比較して、どうか?)

 自力での就業規則の作成は、もとより可能ではあります。 しかし、仮に、自力で就業規則を作成するとなると、ゆうに数百時間は必要となります。

 まず、@事業所の目標を策定し(数時間〜)、A次に事業所の現状分析を行い(数時間〜)、B労働諸法令を修得(憲法・刑法・民法等の知識も必要)し(数百時間〜)、C就業規則を作成することになります(数十時間〜)。

 専門家は、すでにBは済んでおり、Cについてもオリジナルは作成済みであり、@Aについてもアドバイスが可能です。 (ちなみに、私は、大学(中央大学法学部法律学科)で法律を学び(数百時間以上)、社会人として法律を運用し(17年)、社会保険労務士試験合格のための受験勉強をし(数百時間)、合格後社会保険労務士事務所開業のための勉強・経験をし(数百時間 数百冊の専門・関連書を読破)、弊事務所オリジナル就業規則を作成し(数百時間)、社会保険労務士業務を10年以上経験しております。 司法試験の受験歴はありませんが、千時間以上の受験勉強はこなしました。 ですので、労働諸法令のみならず、憲法・民法・刑法・商法・民訴法・刑訴法・行政諸法令等多くの法令を修得済みです。) なお、労働法分野は弁護士にとってもレアな領域であり、専門分野・得意分野としている弁護士はあまりいないようです(私も、大学時代は労働法分野は必須修得科目ではありませんでしたので、ほとんど勉強はしていませんでした。 社会保険労務士試験受験のため、ようやく初めて勉強した次第です)。 また、仮に弁護士に就業規則作成を依頼すると、一般的に、社会保険労務士への依頼とは比較のならないほど、高額となります。

 その後の運用・メンテナンスも、とてもスムーズ・スピーディです。
 

6.就業規則は作ればそれでOKか?(牛馬立ち入るべからず、という看板が。 それでは、豚は入れるか? ライオンは入れるか?)

 就業規則のみならず、決まりごと(法令等)はいわばとてもシンプルな規定となっています。 抽象的な表現とされています。 何故でしょうか? もし、具体的に表現するとなると、おそらく、何十倍、何百倍以上の量が必要となってしまうからです。

 要は、就業規則の適用にあたっては、ケースバイケースの諸問題を解決するためにも、『解釈』ということが必要となってくるわけです。 さまざまな問題は、時・場面毎に、すべて少しずつ形を変えて起こります。

 たとえば、『牛馬立ち入るべからず』というたて看板があったとします。 それでは、豚は立ち入っていいのでしょうか? ライオンはどうでしょうか?

 文字どおり解釈すれば、牛馬だけがダメで、豚はライオンはOKということになります。 これを、『文理解釈』と言います。

 これに対して、目的・手段で考えた場合は、合理的な解釈が必要になってきます。 もし、草を食ってもらっては困る、という目的であれば、豚はダメです。 ライオンはOKです。 そうではなくて、近所に幼稚園があるので、危険な動物はダメだ、という目的であれば、ライオンはダメです。 豚もダメかもしれません。 これを、『論理解釈』といいます。

 個別具体的な諸問題に対処するためには、論理解釈が必要となってきます。

 なにかあったら、その都度、一から対応しても構いませんが、スピーディ・スムーズ・的確な対応は困難ともいえそうです。 この点、専門家は様々なケースに遭遇していますので、とてもスピーディ・スムーズ・的確な対応が可能となります。

 就業規則の作りっぱなしでは、いざというとき、対応がとても困難となります。

 自力で作成される場合は、出来るだけ様々なトラブル場面を想定し、条文の横断的な運用も視野に入れつつ、慎重に検討されることをお勧めします。



7.弊事務所ご提供の就業規則について

 上記諸問題に、円滑に対応できるよう、体制を完備しています。
 
 ご安心して、ご利用いただけるものと存じます。

 弊事務所オリジナル就業規則は、実はとてもシンプルです。 なぜならば、あまり具体的に規定してしまうと、解釈の幅が狭まってしまい、万が一トラブルとなって、弁護士に頼らざるを得なくなった場合でも、肝心な弁護活動に大きな制約となってしまうからです。 と言っても、もちろん決して手抜きではありません。 絶妙なバランスにより、出来上がっている、と自負しています。


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